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一回食べてみんしゃい。 漁業とともに歩む、老舗“干物屋”さんの在り方

第三回目は、老舗の“干物屋”「上野市兵衛商店」(以下:上市商店)の上野さんにインタビューしました!

お店はどのように始まり、志賀島とともに、これまでどのように歩んできたのか、福岡トライアスロンと先の未来とは、志賀島と漁業の発達の地理的な関係も垣間見えました。

 

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上市商店はいつからされているのですか?

上野:上野市兵衛というのは私の祖父の名前で、1931年から始めたんです。

もともとは漁師をしてて、昔はちりめんとかいりこがこのへんでもよく獲れよったから、それを大きな釜で湯がいて、天日で干して加工して商売をしよったけど、だんだんちりめんがとれなくなって、色々な魚を干すようになったんよ。干物屋を初めて40年ぐらい経つんやないかな。今は兄と私と、私の母と家内の4人でやっています。私の兄が3代目になります。私は販売を担当しています。

 

 

1931年からということは…90年近く続いてるんですね!すごいです!!

どんな方が買いに来られるんですか?

上野:お客さんは普通の観光客の方もおられるし、昔からこのお店で買ってくれてる地元の方もおられるし。この近くの旅館とか食べ物屋さんが志賀島のお土産はどこがいいやろうかって聞かれた人がここを紹介してくれたり、バスで2、30人連れてこられるときは家族みんな総出で対応したりします。外国人の方はおらんかな。干物と言っても生に近いからどうしても外国に持って帰るのが難しいしね。だから、福岡の人ばっかり。

 

 

地元の方にも観光客の方にも愛され続けているんですね。どういった商品をおすすめされていますか?

上野:おすすめはそんとき獲れた中で、今の時期(取材当時11月下旬)だったら、アジ、カマス、サバとカワハギあたりもいいし。そんときの、自分たちが作りよって、「今日の魚は脂の乗りがいいな」とか、「肉厚でいいな」とかだったら、今日はこれがいいですよといってお客さんに説明します。魚は獲れた場所でも味が違って、内海の方が脂が乗っていておいしい傾向がある。志嘉島の天然もののアジは金印アジといって、大きさもあるし脂が乗っていておいしい。あと、網で獲るより、一本釣りのでかいやつ方が丁寧で味もいい。だけん、本当は塩をして売るのはもったいないっちゃんね(笑)。

 

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<店主の上野勲さん>

いろんな魚が獲れるんですね!

上野:とはいっても、だいぶ少なくなったけどね。

 

 

生まれも育ちも志賀島ですか?

上野:そうです。外に出たことがない。でも、今はやってないけど、自分はずっとデパートに働きに出よったから。作った干物を自分でトラックに積んで、デパートの天神の地下に出してたけど、お歳暮とお中元にものすごい注文が来るのだけど、人手が足りなくてね。2011年にやめて、ここで店構えした。前からある程度はおいてたけど、今みたいにきれいに店構えはしてなくて、ちょこっとしかしてなかったから。知る人ぞ知るみたいな感じで(笑)。今は電話注文もおられるし、直接買いに来られる方もおられるし、デパートのときのお得意さんも注文しに来られる。東京や大阪、熊本のお客さんもおられるし。

 

 

 

上市商店の干物は全国で愛されているんですね。

一日の中で、干物はどんな風に作られているのでしょうか?

上野:仕入れは、志賀島の魚市場が4時から開くからそれに合わせていくかな。日によってはないときもあるから、そん時は長浜の方まで行く。昔からのなじみの仲買人がおって、うちがいい魚ばっかしか使ってないの知ってるから、「何かいいのあるー?」って聞いたら、教えてくれる。市場から仕入れてきて、うろこを落とさないかんやつを落として、包丁で割って、ひらいて、いらないもの全部取って、干して、塩して。ここで、魚によっては1日漬けるものもあるし、2~3時間漬けるものもあるし。塩の漬ける時間は、大きさもあるし、魚の種類にもよるし。なるべく塩をなじませた方がおいしくなる魚もあるし、少しでいいやつもあるし。いわしとか、その日にとれたものを2~3時間塩したりして。すぐ干さないと、一日塩に漬けると、もうお腹が破れてしまう。だから、仕入れてくるときに、お腹を手で触って確認する。見た目も価値も変ってくるからね。だいたい、6時から始めて100匹を1時間で裁き終わるよ。なるべく早く、新しいうちに作らんといかんしね。鮮度が命やけん。

 

 

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100匹を1時間ですか!?とんでもなく早いですね!

上野:うちの母親は60年ぐらいしよるからね。

 

 

干物づくりで大変なところってありますか?

上野:大変なところはね、やっぱお天気。

 

 

天日干しですか?

上野:そう。雨の日はあんまり買ってこない。で、ひと塩っていって、生で塩をしたものを出したり。

 

 

干物のおすすめの食べ方はありますか?

上野:上手に焼くことたい。(笑)炭がいい。グリルに入れたままでまかせてではなく、自分でころあいをみて食べるのがいいよね。あと、人によって好みがあるけんね。しっかり焼いた方がいいとか、ちょっと焦げ目があった方がいいとか。バーベキューとかだと、外でするからまたひと味違うしね。何事も真剣に集中して焼くことたいね。愛情よ。

 

 

上市商店をやっていてやりがいを感じるのはどんなときですか?

上野:やっぱり食べものだから、この前おいしかったよって言われるのが一番。買っていただいた人がまたいらっしゃるのもうれしいね。

 

 

 

これからお店をどのように営業していきたいですか?

上野:今から漁業も活気がなくなっていくと思うんよね。魚のあるうちにいい魚を提供してお客さんに喜んでもらえればいいなとかね。だから、これをもっといろんなところに出して広げようとか、そういう思いはあんまり無い。来ていただいたお客さんはありがたいことよ。だから、ここまで来る価値があるものをね、提供したいと思うよね。

 

 

 

志賀島のいいところは?

上野:海も山もあるし、何かあったときは、昔から色々知ってるからね、同級生も近所の人も協力し合えるのはいいよね。

 

 

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トライアスロンにはなぜ協力しようと思ったのですか?

上野:人が入ってくることで、活気づいてくれたらいいなっていうのはあるよね。志賀島は子どもも少なくなったし、若い子がおらんくなってきて、年寄りが多くなってきたし。店もう閉めたりね。ここの通りとか8時になったらしーんってなるし。一昔前は酔っぱらったおいちゃんとかがうろうろしてたけどね。志賀島も実際、旅館とかお寿司やとか昔はあったけど。子どもが多かったけんね。七夕の時は、ここも出店がずーっとならんどったけんね。それが子どもが少なくなってだんだんなくなって、今は地元の人が、神社の駐車場でちょろっとするぐらいで。昔は、よそから来た人を受けつけんような雰囲気はあったけど、志賀島サイクルとか喫茶店とか、よそから来た人が来ていろんな活動とかもしてくれてるし。ちょっとした観光スポットになれば人が増えていいかなと思いますもんね。

 

 

 

インタビュー後記

 

志賀島とともに歩んできた上市商店には、取材中にも近所からたくさんの方が買いに来られていました。顔が見えるからこそのお店のあり方なんだなと感じました。上市商店では、 数年前に小学校からの依頼で「干物作り体験」を実施されたそうです。地域住民の仕事を子どもたちが学べるこれは衣食住が近い志賀島ならではなのかもしれませんね。

また一方で、全国に大勢いる上市商店の干物ファン。その心を掴んで離さないのは、上市商店が誇る干物作りへのこだわりが伝わっているからこそだとも感じました。これからも、志賀島の魅力の一つとしてあり続けていて欲しいお店です。

竹下はるか

 

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左から 竹下(学生チーム)、上野勲さん、北川(学生チーム)

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